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事業計画書とは?
事業計画をつくる目的は、大きく2つあります。
ひとつは、他人に事業の概要や魅力を伝えるためです。
銀行から融資を受ける場合や、ベンチャーキャピタルなどの投資家から資金調達をする際には必ず求められます。そして、事業計画の良し悪しによって、融資や出資が受けられるかどうかが決まります。
もうひとつは、起業家自身が事業を進めていくための羅針盤や見取り図とするためです。
<Why?>
なぜ、この事業をやるのか?
これは、後で困難にぶち当たったときの精神的バックボーンにもなりえる。また、事業として成功するものは社会から歓迎される事業である場合が多いので、自分の事業の「社会的存在意義」についても確認しておきたいものです。
<What?>
商品・サービスの具体的な内容は?
商品・サービスの具体的な内容を、端的にまとめてみる。顧客に対してどんな商品やサービスを提供しようとしているのか、あるいは扱う商品やサービスが市場や顧客に受け入れられるものかを考えてみましょう。
<Where?・Whom?>
想定する市場はどこなのか?また、ターゲットとする顧客は誰なのか?
商品やサービスを提供しようとするターゲットは、できるだけ絞り込むのが望ましいだろう。相手が鮮明になればなるほど、アプローチの方法が具体的に検討できるようになるからです。ここで「Where」は市場、「Whom」はさらに絞り込んだ顧客を指しています。
<How to? >
どんな特徴で、どんなノウハウを使うのか?
商品やサービスを、目指す市場・顧客に提供する際にどうやって競合優位性や独自性を発揮するかを検討する「販売力」「商品のユニークさ」「物流の効率性」といった特徴を発揮するには、それを生むノウハウ・手段も必要です。
<When?>
どのようなタイミングで事業を行うのか?
事業の特徴となるノウハウを獲得するには、「人」と「金」をどんなタイミングで投入するのかが重要となる。どの時期にどんな人と、どれくらいの資金が必要か。この「時間軸」の概念を設定することで、事業の実行計画が出来上がるのです。
<Who?>
誰がその事業をやるのか?
事業内容とそれを実演するフローの中で、どんな人材が必要になるかを考えなければならない。まず自分やパートナーの能力を判断し、事業を進めるうえで他にどんな能力・経験を持った人が何名必要なのかを検討していく。
<How much?>
資金は?売上高や利益の目標は?
開業前、そして開業後に事業を運営していくうえで、どれだけの資金が必要になるのか試算する。またそれがどんなタイミングで必要になるのか、事業フローや売り上げ見込みと合わせて検討し、具体的な資金計画、資金調達手段に繋げていくのです。
「6つのS」を「6W2H」に置き換える
独立するだけなら、ことは簡単。
問題は、独立して行う仕事をどうやって継続させ、発展させるかです。
それを実現するためには、独立後の日々の努力が大事なことは当然として、独立前にもしっかり準備しておくべきことがあります。
それは「6つのS」で表すことができます。
つまり、信念(精神的財産)、仕組み(知的財産)、資金(物的財産)という「基本の3つのS」に、商品(サービス)、市場、支援を加えた「6つのS」。
独立の理想像とは、これら合計6つのS を獲得することにあります。
それをどう考え、どう準備し、どう動かしていくのかを綿密に計画したものが、つまり事業プランなのです。
何をするのか? どの市場でやるのか?
「6W2H」には、考えを進めるうえでの原則的な順番があります。
多くの場合は、「What?」から入って、次に「Where? Whom?」へと進んでいきますが、反対に、先に狙う市場やターゲットを定めて、そこに提供できる商品やサービスを考案する方法もあります。
前者は動機先行型で、後者は根拠先行型。
マーケティング的には後者が有利ですが、「What?」と「Where? Whom?」の2つを頻繁に往復してプランを深めていけば、どちらからスタートしてもかまいません。
いずれにしても、「Why?」には、たえず立ち返ることが大切です。
なぜ、自分はそれをやるのか、なぜ、人々(市場)はそれを必要とするのか、その回答が曖昧なプランは「空理空論」でしかないのですから。
「How to?」は扇のカナメ
残された「2W2H」のいずれも軽視できませんが、中でも「How to?」は、最重点項目。
言い換えれば、この「How to?」こそ、市場がその事業に対して感じる魅力であり、競争相手に対する優位性となるポイントなのです。
まさに、事業アイデアの部分。
既存のものや先行している人々より、一味も二味も違う事業にするための創意工夫なのです。
それは商品やサービス自体の工夫でもいいし、販売・提供方法の工夫でもいいです。
さらには生産段階の工夫、流通の工夫、販売後のフォローの工夫などでもいいです。
ここが弱いと、後の「When?」「Who?」「How much?」などは、力のない計画になりかねません。
最後に実行のためのプランを
プランの最後が「When?」「Who?」「How much?」。
事業を実際に稼働させていくための諸課題に取り組むわけです。
どんなにいい事業アイデアでも、実行のためのプランが甘ければ、それは「絵に描いた餅」でしかありません。
実は、この点のツメが甘い人が少なくないのです。
仮に事業を1年間行うとして、必要資金はいくらか? では、その資金はどうやって用意するのか? また、どのような仕事をするスタッフが何人必要か? さらに、そのスタッフはどうやって集めるのか? これらは夢を語る部分ではありません。
現実的で、かつ具体的な案だけが求められる個所だと考えてください。
事業計画書から外せない8つの項目
事業プラン名 | 簡潔かつ魅力的で、これだけでも何を計画しているか伝わるように。 副題をつけてもいい。 事業プラン名は、事業の顔となる。 |
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事業内容 | どんな市場・ターゲットに対して、どんな商品・サービスを提供するのか、それはどんな魅力や特徴があるのかを可能な限り端的に説明する。 |
市場環境 | 市場規模や成長性、競合相手の評価などを各種統計データを活用して分析する。 表やグラフが有効。 同じ地域の同業種・同業態の事業者と、いかに差別化できるかも考察する。 |
競合優位性 | 競合が模倣できない優れた点を説明する。同業種・同業態だけでなく同ターゲットの異業種競合をも意識し、優位性や差別化を訴求する。 |
市場アクセス | 計画している事業を、どう市場に認知させるか、どう販売網を築くかなど、事業の実現プロセスを伝える。 具体的な計画をアピールする。 |
経営プラン | 売上計画、仕入れ計画、開発・生産計画、人員・組織計画、設備投資計画など、事業を継続的に運営するためのシステムを紹介する。 |
リスクと解決策 | 想定されるリスクや問題点を抽出し、危険度と発生頻度の観点からを分析すると共に、リスクレベルに応じて対処方法や解決策を先行的に提示する。 |
資金計画 | 詳細な収支予測に加えて資金繰り計画も立案。設備資金、運転資金に分けて考える。また、資金調達案や返済・配当計画も提示しておく。 |
事業計画書の主要項目をつかむ
事業計画書の中に書き込む主要項目は、図にある「事業計画書から外せない8つの項目」になります。
これらの項目は、業種や業態、規模の大小にかかわらず、必ず設定しておくべきもので、各項目には、それに則した表現方法で結論を書き込む必要があります。
そこで問題なのが、「各項目に則した表現方法」という点です。
つまり、自らの専門分野の知識のほかに、マーケティングや経営、会計などの知識が必要になるわけです。
ここに事業計画書作成の難しさがあります。
しかし、計画書が書けないということは、結局、プランが立てられないことを意味しているので、ひいては事業を実施できないということになってしまいます。
が、悲観することはありません。
基礎的な知識は、書籍や短期のセミナーなどでも十分に学べるし、大事なことは、むしろ、それらの知識がなぜ必要なのかを理解していることです。
それさえわかっていれば、細部については、各項目の専門家と相談しながら進めることで何とかクリアできるはずです。
魅力、根拠、緻密が内容上のポイント
事業計画書は、前述した主要項目の説得力によって、その可否が決まります。
では、具体的にはどんな内容を書けばいいのか? 平易な表現をすれば……。
「何を、なぜ、誰に、どんな市場で、どんな特徴を持って、どのように知らせ、どのように提供しますか。
そして、それは、いつ、誰と、どんな方法で、どんな数字にもとづき、どんな数字を目指して行うのか」ということになります。
実際にはボリュームが増えるため、冊子として仕上がるケースが多いのですが、その場合、全項目に記述するだけでなく、山場を設けることが大切です。
内容の魅力を伝える部分、その根拠を示す部分、そして計画の緻密さ、これらには特に注力したいものです。
明瞭、簡潔、平易が作成上のポイント
また、事業計画書の作成上、注意したい点はわかりやすく書くということです。
内容がわからないプランに賛意を示す人はいません。
もちろん、難解な専門用語の羅列や外国語表記の連発も逆効果でしょう。
長すぎる前置きや、多すぎる参考資料も考えものです。
金融機関も融資担当者や投資家は忙しいから簡潔に書くことが重要。
とにかく、明瞭かつ簡潔が鉄則です。
もし、プランが壮大ならば、一言でわかるタイトルやサマリー(事業プランの要約)を用意しましょう。